織田ファッション専門学校の卒業制作の審査員をしてきた。卒業制作は、テーマを自分で決めて、各々の想いを落とし込んだ1枚のスタイリング作品(写真)を発表する。
人の本気は他人の心を動かすものだ。学生の数ヶ月の情熱が作品に籠っていた。
事前に、数ヶ月準備してきた学生のコーディネートをプロのカメラマンが撮影するのだが、プロカメラマンを雇っている以上 複数の日程に散りばめる事は出来ない(予算の都合)。よって学校付近のロケーションで、決められた時間の中での撮影となる。
中には、こだわりのある世界観をお持ちの生徒さんもいたが、場所・時間の制約を考えて上手く立ち回らないといけない。生徒の皆さんは、思考を凝らして撮影に臨まれていた。
今回グランプリに輝いたのは 100年後の服を表現した生徒さんだった。彼女が良かったところは、作品もさる事ながら 楽しそうに課題に取り組んだ姿だった。
結局「仕事も同じだ、、、」。最終的に仕事を頑張る人よりも、楽しんだ人に軍配があがる。自分が「のめり込めるモノ」を探し当てた時点で、もう勝ちなのかもしれない。仮にそれが、スタートでは楽しくもなんとも無かったモノだとしても、取り組んでいるうちにハマっていければ、勝ちなのだろう。
グランプリの記念写真を撮った後 自分の席に着いた彼女は静かに泣いていた。それがとても印象的だった。頑張った証拠である。お疲れ様でした。

今回、作品達を俯瞰で見て「ある共通点」に気付いた。それは出来上がったビジュアルが黒やグレーで暗い色だと言う事。我々エンターテイメントの世界で生きるスタイリストが、1番使わない色である。
1枚の作品から楽しさ、ワクワク、高揚感をビジュアルで表現するのがスタイリストの仕事なので、お客様の気持ちが沈む黒は、使わないことが多い。
ただ今回は生徒達が好きな様にテーマを決めて好きな様に表現すると言うテーマ。するとどうしたことか黒が多発するのだ。
理由は、現代社会が【辛い、暗い、キツイ】という象徴なのだと思った。
ビジュアルを黒くした女学生の1人は、「毎日の満員電車が辛かったので、、、」という理由で今回の作品に取り掛かっていた。
それはおそらく、無表情の人間が多数乗合している電車なのだろう。。。人は無表情の人間を見ると楽しさが半減し、喜びが失落する。特におじさんの無表情に関しては「怒ってるのか?」と思ってしまう。。。それを毎日毎日眺めていると気分が滅入ってしまうのだろう。
これを受けて、我々大人が悪の根源だと思ってしまった。大人が楽しそうに仕事をしていないということ。大人が不機嫌な社会を作ってしまうと、その想いは伝染し若い世代へと連なっていく。。。
仕事は辛いモノ、生きていく上での試練と考えると、気分は下に下にいき 上がって来れなくなるのだ。
よって、今世界を支えている30代〜50代の人間がキラキラ輝いていないと、若者は世界が黒く見えるのではないだろうか。

貴方は「自由なテーマで好きな様に作品撮影をして下さい。」と言われると何をテーマにしてスタイリングを組むだろうか。
黒くて闇の深い世界を描いてしまうだろうか。若者が大人になることを「楽しみ」とおもえる空間を今のおじさん達が作って行かないといけない。
津野なら、将来自分が立つであろうキラキラした理想の空間をプロデュースする。そして、そこに立っている自分をスタイリングし、その作品を胸に、逆算して細かく人生を設計して行くだろう。
若者に明るい未来を作れるよう、おじさん達は毎日ご機嫌に仕事をしなければならない。

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