1つの撮影が始まって終わるまで、stylistが何を考えどう仕事しているかを解説しよう。
ライフスタイル雑誌「GOODA」のケース
雑誌社からの依頼はこうだ
◆ビジュアルテーマ
大人の「春」の生活 コーディネート3体 モデルは間宮祥太朗 30歳
●ピンクや緑のペーパー背景を使用
●爽やかでありつつ、シックな雰囲気
●大人の春を演出
大人の春という事が大前提のテーマだ。
皆さんならどう考えるだろうか。
祥太朗は30歳の大人(おそらく同級生より更に大人な印象だろう) 顔は濃い目だ。
そして、GOODAは ライフスタイル誌。
この辺の要素を踏まえると
●若手のアイドルが着るような蛍光色や、
●大柄の柄物、トップスとパンツの色が対象色のバキッとしたコーディネートなどは
ライフスタイル誌には奇抜過ぎなので 避けないといけない。
●トップスに黒を持ってくるのは季節的(春)に重い。
●アンパイは白のコーディネートだろうが それだと、誰でも思いつく配色になるのでつまらない。
更に
●背景にピンク、緑が来るとなるとその色を避ける必要がある。何故か?
モデルさんが画面から浮き出て来ないからだ。
では、どのような色が似合うか? それは【背景を邪魔しない色】だと思う。
まずはこちら
※写真は上記UR参照
1枚目
[ピンク背景にグレーのグラデーションのコーディネート]
ピンク×グレーは大堂の合わせだ。
うちの師匠 中川原さんも ピンクにはグレーだとシキリに仰っていた。
映え色背景のピンクを、グレーは上手に中和してくれる。
今回はグレーのロングシャツコート+チャコールグレーのシャツの合わせにした。
1番外のアウターの色が薄く、中が濃いコーデは基本的には好きではないが、
ピンクの背景を 外側から内側に向かってグラデーションで馴染ませる為に、この合わせにした。
そして、足元に向かって黒くなり、色を締めていった感じだ。
例えば、このパンツが白だと締まりのないコーディネートになった事だろう。
更に、ライフスタイル誌という事でアウターのシャツコートは素材の柔らかいものを使用し、全体に柔らかさを提案した。
2枚目
[白バックにピンクのカーディガンのコーディネート。]
ピンクのカーディガンにした理由は
🌸桜の季節という事と、
今回の映画「変な家」https://hennaie.toho.co.jpの宣伝活動としての雑誌であった事から、
「映画のコンセプト色のピンク」を使った感じ。
服が決まってから、編集さんとカメラマンさんの中で背景を白にする事が決まった。
コーデのバランスとしては上から下に向かって「A LINE」で広がって行く感じにした。
インナーの白はロングシャツに。これを普通丈にしてしまうと、「読者に夢を与えられない!」
と思った。
エンタメ業界に携わる人間の役目は、「読者に夢を与える事」だと思っていて、
少しでも、写真から「トキメキ」を感じて欲しいと思っている。
一般の人はこんな長いシャツは着ないだろう。少しでも誌面から非日常を味わって貰いたいという想いでロングだ。ロングにする事で華やかさと、迫力が出ていると自負している。
3枚目
[ベージュのコーディネート]
背景は緑だった。単純に緑にベージュは「田舎の落ち着く色」ではなかろうか。
山に木、まさに春の息吹。ライフスタイル誌にはバッチリだろう。
という事でベージュのワントーンコーディネート。裾に向かって色を締めたパターンだ。
更にはフーデットパーカで、アウトドア感を演出した。
インナーのベージュシャツはメッシュ素材になっていてソフトな肌触り。ライフスタイル誌ならではの風合いのシャツだ。
ワントーンのグラデーションは、とても綺麗だし、ベージュは大人な色。
ただベージュは60代以降になると、「枯れて見える」ので注意しないといけない。
若手のベージュはとても美しく目に映る。
今回の3つのコーディネートの服の形を変えてる事にお気付きだろうか。
このように複数カットある際は、読者を飽きさせない為に、色を変え、形を変えるよう意識している。
カメラマンは津野がファッション誌のレギュラーをやっていた時に、数々の企画を共にした山仲さんだった.
懐かしい。相変わらず撮影は早く!的確で!モデルさんへの支持が絶妙!!最高だった。
10年ぶりくらいに再会できたことが最高の思い出だ。ありがとうございました。
上記のように
stylistは様々なバックヤードを考えながら、1体のコーディネートに落としている。この要素を組み合わせて作る作業には、単純に膨大な量の経験が必要だ。経験と量が礎となる。
そのノウハウの一部ではあるが、今回紹介してみた。何かの参考になると嬉しい。
映画「変な家」 是非 劇場で!!
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