スタイリストになると、スタイリング料金の交渉は自分でやる。スタイリスト事務所に入って「交渉事は全て事務所に!」というパターン以外は全て自分でやる必要がある。
一般的にギャラは
●テレビ媒体 基本3万円【時に5万円】(NHKに関しては、3万円もあれば、4万円、5万円もある。タレントさんのNHKへの貢献度でスタイリストのギャラも変わる)
●ファッション雑誌1ページ単価7000円〜2万円。
カメラマン同様に、「ページ単価」でギャラが振り込まれる。つまり.同じページに複数体入る若年層向けの雑誌は労力と、ギャラが見合わなくなるケースもある。
雑誌を撮影する期間というのは、各雑誌で大体 第◯周目と決まってくるため。1雑誌しかやっていないと。生活に困窮する。
●映画の舞台挨拶 3万円〜18万(これも、映画のバジェットによる。)
全国300館で公開!!となると社を上げての一押し作品なので、予算もありスタイリング料も上がる。
逆に30〜50館になってくると、予算は限られるので、スタイリング料も下げないといけない。
●映画の取材日(複数媒体固まる日)3〜10万
1体で5媒体〜10媒体通しで撮影して、映画宣伝会社から振り込まれる。
●イベント2万〜25万
資生堂とか、カルビーとか大きな企業様相手の仕事だとスタイリング料は上がり、身内のファンのイベントとかになると、下がる。
●広告は5万円〜100万円以上
著名人の広告か、テレビ広告か、WEB広告か
動画なのか静止画なのかで大きく変わる。
有名人の広告スタイリングで
1人1スタイリング100万円を(衣装費別で)請求するスタイリスト もいて、広告会社から煙たがられる人もいる。
ココは、「スタイリストによる」としか言えず明記出来ない。
通常は芸能人の動画で20〜50辺りで広告により上下する。100万請求する人を数人知っているが、業界で悪い噂は回り、仕事し辛くなる。モデルさんの動画だともっと安くなる。
電通のホワイトボードに
「スタイリスト◯◯のギャラを下げろ!」と書かれた人もいて、それはそれは噂になった。
仕事を長く続けたいのであれば、常識の範囲内で自分をブランディングして、適正価格を提示するのが最も良い。
津野もスタイリストの収入のみで生きていけるようになった頃、調子に乗った期間があった。
自身のブランディングの事で頭が一杯で、なんとか「スタイリストとしての位置を確立しないといけない」と躍起になっていた。
芸能界でも上位ランクの方のTVのスタイリングで、制作費の多いゴールデンの有名番組に対し、5万円請求していた。
勿論、テレビ局は基本の3万円に下げて来ようとする。しかし、そこで屈したらブランディングの意味がない。
「他も5万円でやってますので、お願いします。」
その一点張りで、同じ局で5〜6番組押し切った。結果として局側が折れたのだが、
後日そのタレントさんの事務所のマネージャーから1本の連絡が入った。
「津野くんさぁ、ウチの◯◯のスタイリング料 高目に局に伝えてない?局内で◯◯の評判が悪くなるから辞めてくれない?」と言われた。
めちゃくちゃ焦った。うちとしては大クライアントからの叱責!!コレはやばいとひたすら謝った。
どうやらテレビ局のプロデューサー陣が徒党を組んで、お怒りの電話を事務所さんに入れたのだった。。。
「こんな事があっていいのか、、、汚い手使いやがって」とも思ったが、局だって制作費を抑えるのが仕事だ。
芸能プロダクションやTV局のおかげで生計を立てている我々からすると「グーの根もでない上手なやり方」であしらわれた瞬間だった。テレビ局の圧勝だ。下請けは弱い、、、。
テレビ局事件の直後、先輩のスーパースタイリストに会った時に今回の件を相談してみた。
すると、
「ウチだって3万円でやってるよ、あんま調子に乗ると長く仕事出来ないぞ」とごもっともなアドバイスを頂いた。
尊敬する先輩の一言に
「人の怒りを買ってまで料金を上げるのは辞めよう」と誓った。
何でも【適正価格】というものがある。
その範囲内でブランディングとして料金を釣り上げる事は真っ当だと思う。制作の言われるがままギャラを承諾しても自分の位置を作れないのは事実だ。
しかし、常識を超えた利益の獲得は敵を生む。
「目先の利益を取るのに必死で周りが見えていないと、痛い目を見る」という事をこの時 教えてもらった。
それからというもの、チラホラ昔の津野の様な失敗をして仕事を失っている人の話を耳にする。
《例1》
1人は、ヘアメイクさんだ。テレビで7万円の請求をしているという話をマネージャーから聞いた。
局はマネージャーに「助けてくれ」の一報を入れた様だ。
タレント事務所としては「局と仲良くしたい。かたや、タレント本人の好きなメイクさんだから なんとか支払ってあげたい」その板挟みで、局から3万円、事務所が自腹を切って4万円を出してあげていると話していた。
メイクさんの1人勝ちだ。
その不満の声は同じチームの津野に来た。
「正直このメイクさん使いたくなくてさぁ、、、使えば使うほど、事務所の負担が増えるんだよ、、、困ってんだよねー」と言っていた。
津野も昔はこうやって言われていたのかもしれない。と思うとゾッとする。
結果として、その後何回かは同じチームとして仕事をしたが、そのうちに担当を外され違うメイクさんが来る様になった。
この事からも分かるように、「仕事はWin-Winでないと続かない」という事だ。
外されたメイクさんはマネージャーさんに
「スタイリストは津野ではなく、自社所属のスタイリストに変えろ!」と申請していたようだ。
自社所属のスタイリストを使えば、その手数料までぶん取れるわけだ。どこまでもお金に汚い人だった。
《例2》
企業広告で1人1体のスタイリング料に100万取っているスタイリストの話。タレントさんは誰もが聞いた事のある有名な俳優だ。常に主役級の人である。
その知名度を逆手にとり、
「衣装費は別で、ギャラとして100万払え」と言ってくるらしい。広告代理店は取り分が減って泣いているという。
「でも、事務所がこのスタイリストが良いと言ってくるから、逃げられない」と話していた。
ある意味上手いやり方ではあるが、気付かないところに ほころびが出ていた。
メイクさんだ。
「え?何でメイクさんに迷惑かかるの?」と思ったが、スタイリスト&ヘアメイクとして、予算を確保しているから、当然片方の予算が上がると片方は下げないといけないという事だ。
広告代理店がメイクさんに
「このような事情で申し訳ないのですが、安くでお願いします。」と言ってきたようだ。
メイクさんは怒りのトークを、別現場の津野にしてきた。
コレも1人よがりのロクでもないstaffの仲間入りだ。
以上2つの悪い例を読んでもらったが、逆もある。
制作や芸能プロダクションが不当に安い金額を提示するケースだ。
こちらだって会社を、切り盛りしているのだから、そこは必死に戦っている。
芸能プロダクションが制作から我々スタイリスト&ヘアメイクの料金を一括して貰って、不当に抜いて、我々に分配されるケースもあった。
ある地点から、「これからは事務所に請求してください。」と言われたから怪しいと思っていた。
これは実際にあった話だが、制作に直接請求していた時は4万だったのに、同じ媒体で事務所請求になった途端3万になった事もある。完全に黒だ。
勿論抗議はしたが、「全体の制作費が安くなったから仕方ない。ごめんね」と言われて逃げられた。
これ以上抗議すると、大クライアントのプロダクションを敵に回すので辞めておいた。
しかし、この件に関してはまだマシだ。
別件では、
マネージャーさんが、自社の芸能プロダクションに内緒で、staffのギャラを個人のポケットに入れていて、会社を首になった事もあった。
お給料では絶対買えない額の不動産を手に入れた事が会社にバレて事態が発覚したらしい、、、。
上記はなかなかない稀なケースではあるが、実際に起こったケースである。
どの世界にも悪知恵が働く人はいるもんだ。
スタイリストで自分の仕事が嫌いな人は1人もいない。メイクさんカメラマンもそうだ。
その大好きな仕事を人に恨まれてまで、やる事を皆様はどう思うだろう。
自分は人に喜ばれて仕事をしていきたいので、コレを良いとは思わない。
「人を幸せにする仕事をやっている。自分は価値のある仕事をやっている。」と思いたいので、今後も適性の範囲内で料金交渉をして自社を守って行きたいと思っている。
最後に、現役スタイリストで上記のような不当なブランディングをやってる方へメッセージをしよう。
「共にこの素晴らしい仕事を長くやっていこう!!分からなかったら相談して下さい。教えるから。
人に喜ばれる人になっていきましょう!!」
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