7年前父が亡くなった。父は自営業で、米と灯油屋を営んだ。仕事に熱心でお客様1人1人を笑わせ、盛り上げて、トコトンお客様の為に尽くす人だった
一緒に配達を手伝った事もあるが、「良くもまぁ沢山の笑顔を作る人だなぁ」と感心した。
そのコミュニケーション能力の高さから、長い間、仕事は山の様にあったが、スーパーが米を扱う様になり、大型ガソリンスタンドが灯油を叩き売りするようになってからは、価格競争に頭を抱えるようになり、売上は下がっていった。
そんな中でも奮闘しようと営業にあけくれ、配達に精を出している最中、灯油缶を持ったまま倒れてしまった。
最後まで「人に笑顔を与えた人」だったと思う。
家では冗談ばかり、遊び心の塊のような人だったので、母は毎日笑っていて笑顔に包まれた家だった。
父を思い出す時は、いつも記憶の中で笑っている。

津野は過去に数々の撮影を行った。撮影はスタイリストの日常では当たり前、当たり前の中に特別感を見出すのは難しい。
スタイリスト15年を振り返っても、思い出すのは【撮影ではなく、人の顔とその時の感情】である。
その時一緒に過ごしたアシスタント、その時一緒に過ごしたタレントさん、マネージャーさん。
彼等の笑顔や、共に過ごした時の感情しか思い出せない。
仕事の真髄はここにある。仕事は何をするかよりも、誰と過ごしたか。スタイリストは手段であり、思い出こそが1番の宝物となる。
誰と過ごしたかの部分を粗末に生きていると、仕事は、ただ飯を食うだけの時間となり、思い出は瞬く間に消える。しかし、死ぬ時に残るのは思い出だけだ、、、。
・どれだけ身近な人を幸せにしたか、
・笑顔を届けたか、
・士気をあげたかが、
仕事から得られた副産物だ。
仕事が忙しいと気遣いを忘れてしまう。忙しいと言う字が「心を亡くす」と書くのも納得がいく。
忙しい事で、発する言葉からネガティブが放たれ、それがコミュニティに蔓延すると、人は文句で鬱憤(うっぷん)を晴らそうとしてしまう。人の文句は蜜の味とは良くいったものだ。
しかし、ネガティブを発して、態度にだして周りが幸せになる事は有るだろうか、、、。聴き苦しいだけだ。
その当たり前の事に、改めて気付かせてくれた新人がいる。彼女からの「進退をかけた血の通った発言」のおかげで、ハッと我に帰る事ができた。

弊社はスタイリスト界の中では、人が多い。人が多い事により【忙しい】が分散され、緩和されるから大変有難いと思っている。
味方の量は、財産である。
今後は忙しい時にこそ、機嫌を一定に保ち、空気感に重点をおき、組織作りに精を出す事を心がけよう。
管理職は形の無いものを如何(いか)に作れるかにかかっている。人口減少の一途を辿っている現代でも、人が集まる様に努めていかねばならない。
「有難い」とは、「有る事が難しい」と書く。コミュニティを存続する事は難しい。難しいからこそ、有り難いのだ。
業務に追われ、しんどくなっても仲間達の顔が浮かぶよう、
普段から「この人達を裏切れない。」と思わせる「気遣いと配慮」こそがチームを強くするのだと思う。
成長に必要な要素は、「変化を歓迎し、違和感に打ち勝つ事」今までの価値観を壊して、違和感を喜べる様になった時に、成長は生まれる。
ポジティブな社内を1つずつ作っていきたい。
かつての父の「生前の笑顔」の様に、
ふと、スタイリスト業を振り返った時に、お世話になった「各時代のアシスタントの笑顔」が頭に浮かんでくれたら嬉しい。
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