例えば番組制作担当から
●暖色系のカーディガンルックでお願いします。
●旅する感じなので、パンツスタイルでお願い致します。
とお達があったら、
皆さんは当然言われた物を用意するだろう。弊社も同じである。言われたものを従順に集める。
では、撮影当日その通りに事が進むかと言ったらそうでもない。
該当のもの以外を持ち込む事に関しては、スタイリストの経験値がモノをいう世界ではあるが、
パンツと言われても、タレント本人が好きそうなスカートがあったから、一応スカート持って行ったらそれに決まった。なんてことはザラにある。
タレントさんからは「別にパンツじゃないと駄目。なんて言われてないよね?」なんて言われたりする。
確かに駄目とは言われてない。グレーゾーンだ。
念の為、製作側に
「パンツと言われておりましたが、スカートになってしまって、、、」と伝えると。
『あ、別に良いですよ』なんて言われたりする。
「じゃ先になんでも良いって言ってよ。洋服の選択肢増えたのに」と思うことも しょっちゅうだ。
しかし、制作は制作で
「一応伝えておかないと後で厄介な事になりたく無い」という保険で条件を伝えてくる。
要は、衣装発注する方はそれほど、厳密な立場で条件を伝えているわけではない、という事をstylist側は知っておかないといけない。
そうなると、服を用意する側は
言われたアイテム8割の他に自分で考えて、
それとは違うアイテムも2割準備する必要がある。
この2割は 事前に言われた指定の物ではないが、タレント本人にドンピシャハマる好きそうなアイテムにする。
すると、制作サイドと事務所サイドの両方のおメガネに叶う準備が完了する。
これが、プロフェッショナルの動きである。
番組、雑誌社の企画にそった物集めを
真面目に用意する事は当たり前だが、真面目過ぎても要領が悪い人に成り下がる。。。
その辺をうまく理解し、準備しないといけない。
ただし、この2割の余裕が周りの障害となってはいけない。カドが立つまでいってしまうとタレントさんのイメージの悪化にも繋がる。
映画「帝一の國」の完成披露試写会の時。制作からレッドカーペットなので、「全員黒のフォーマル衣装でお願いします。」と連絡がきた。
各々のstylistがヨウジヤマモトだの、フェンディ だのアルマーニだの一流ブランドの黒フォーマルをこぞって集め。本番に臨んだ。
有名俳優さんが一同に集う媒体は、大変だ。
映画配給会社から、舞台挨拶の日程と衣装イメージがくるや否や、速攻でメゾンブランドにお声がけを開始する。少しでも送れると、竹内涼真さんからお声がけを先に頂きまして、志尊さんから、、、なんて事を言われ、貸してくれるところがなくなる。
うちは電話スタートが1時間遅れたばっかりに、良いところが全て埋まった、、、なんて事もあった。
なので、前々から裏で宣伝部をちょくちょく突いたりしていた。「次の舞台挨拶、どんな感じの衣装イメージになりそうですかね?会議の段階でも良いから教えて下さい。」なんて事をやっていた。
帝一の時、大人女性ファッション誌で、全員黒と言われて、誰よりも早く「アンドゥムルメステール」の予約が取れた時の高揚感は今でも記憶に新しい。
スピードこそ命である。
話は映画「帝一の國」に戻すが、
レッドカーペット前の取材の時間となり、
全員顔を合わせた時、菅田君だけベージュのJKで着ていた。。。
stylist同士皆 顔を探り合った、、、「嘘でしょ?!」
ただ、映画会社も我々も何も文句は言えなかった。
なぜなら、主役だから。。。
「もう時間ないですよー取材始まります!」の号令でベージュで出てくれば、今更「着替え下さい」なんて言えない。
結果そのまま1人ベージュでフィニッシュだ。
自分は舞台挨拶を俯瞰で見ていたが、どう見ても全員黒の方が締まってて格好良かったと思う。
どういう思惑でstylistがベージュを持ってきたのかは知らないが、他stylistは呆れ顔だった。
番宣のバラエティや雑誌の1企画で相談の上 予定外の衣装に変更する事は許容範囲かもしれないが、
映画会社がその年の一押作品として公開する一番大事 かつ、高額費用のかかる完成披露試写会の大舞台で、1人のわがままがタレントの評判を落とす事だってある。
菅田君本人は、事前に「黒で集めることが決まっていた」なんて事は分かっていなかった可能性が高い。
なぜなら、どの俳優も本番当日衣装合わせの時に、何も知らずに「なんか黒ばっかだね」といってくる方は多いからだ。
stylistから、「そうだよ。今回は黒と指定が来ているよ。」と言われて初めて気付いたりしている。事前には何も聞かされていない。
このように、様々な要素を考え周りとの協調性を考えた衣装選びが大事で、そうする事で
タレントさんも見え方が良くなったり悪くなったりする。stylistがうまく立ち回らなければならない。
昨日の撮影でも、スーツ+シャツと言われたが、
スーツ+丸首ニットをバリエーションで持って行ったら それに決まっていた。
「もしかしたら、コッチもいけるんじゃ無いか?」というプロだからこそ、考えれる前向きな提案が
相手にとっては嬉しい事もあるという事実を知っておく必要があるだろう。
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