独立直後、時間のあった頃に一緒にサッカーをしていたスタイリストSくんと久しぶりにテレビ局で会った。バラエティ番組で楽屋が隣だったのだ。
「津野さんお久しぶりです。子供を保育園に送る時によく津野さん見ますよ。」と言われた。どうやら近所のようだ。
彼は12年ほど前、若者系のファッション誌で「俳優ページ」を担当していた。雑誌の販売数が伸びる要のページである。
津野は雑誌専属モデルしかやった事が無かったので、当時は大変羨ましく思っていた。
「今もファッション誌をやっているか」を聞いたら、今はやっていないという。むしろ、「雑誌がドンドン無くなる前に、軸足を芸能に向けて助かった」と言っていた。
軸足を雑誌から芸能にする事は難しい為、移動できた事は凄いと思う。雑誌は雑誌村の住民。芸能は芸能村の住民と関わりが無いと仕事は来ないのだ。
津野は元々芸能に知り合いが多かったので、スタートからやれたが、雑誌だけの師匠だったら、苦戦したに違いない、、、。
例えば、貴方がガチガチのモードの世界のスタイリストを狙うなら、Vogue、SPURをやるようなスタイリストに就いて、モード誌の編集と仲良くなるしかない。そして、その村でシノギを削ってライバルに勝って行く必要がある。かなり狭き門だ。
しかし現代では、独立後にその雑誌が残っているかどうかは不明瞭という状態である。
昨今SNSの普及により、雑誌の減少は歯止めが効かない。。。「オシャレ情報を仕入れるには、雑誌から」という基盤が根底が覆された。
2025年現在は、オシャレなファッションは、SNS上のマイクロインフルエンサーから取り込む事が主流である。10万人以下のマイクロインフルエンサーが、「世間と近い感覚」と言う事なのだろう。
フォロワー数が10万、100万のインフルエンサーは既にちょっと前の芸能人くらい遠い存在となっていて、リアルではない立ち位置にいる。

数年前、PRESSの方から
「スタイリストのSくん知ってる?彼凄いよ。男性俳優の事務所さんと話して、毎日コーディネートが変わる《365日 日めくりカレンダー》を作ったみたい。しかも、カメラマンもやったらしい!」と聞いた。
自分から企画を持ち込むスタイリストは稀で、営業すらしない人がほとんどなので、正直驚いた。
津野もその話を聞いて、直ぐに《365日 日めくりカレンダー》の話を女優さんの事務所に持ち掛けたのだが、断られてしまった。
当時の話を聞くと、「モデルが男性なので《着替え場所の確保》が要らないから、完成出来たのかもしれない」と言っていた。
365体分の撮影をすることは それなりに大変で、1日に撮れても20体。平均12体だとしても、1ヶ月俳優さんの時間を貰うことになる。
通常1日〜3日で終わる撮影に、1ヶ月。
俳優を1ヶ月取るのは、かなり大変。やりたがらない人がほとんどだろう。。。

彼は他にも、各芸能事務所の売り出したいタレント10名くらいに声をかけて、コンテンツを作ったりもしている。かなり行動的な人物だ。
どうやら30代に差し掛かった頃から、「スタイリスト業だけで食べて行けなくなる未来」を考えて、近いジャンルに徐々にピボットして、輪を広げようとしたようだ。
実際、30代のスタイリストは、皆同じ様な事を考えているが、実際に動く人は少ない。
彼の様にスタイリスト業を活かした業態で、広げていくのは賢い。津野は不動産や、飲食など、全く違うものにトライした為、それなりに苦労してしまったし、大した実績も残せていない。
今はスタイリスト業に近い所で、IMMEZというブランドをやっているが、洋服である以上 理解出来る事が多い分 アイデアは出るし やり甲斐もある。
更に事業展開を行う場合は、服に関わる仕事で広げて行こうと思う。

これからスタイリスト、アシスタントになる人は、まずはスタイリストとして、月の半分が埋まるくらいになる事が目標だろう。まずは、自分が潤わないと楽しい事も出来ないし、誰も救えない。とにかく稼ぐ事だ。
そこからは、自分が理解できる領域で横展開して行こう!
コメント