肌と生地がくっついている人は、太く見える。よって、ラグビーやサッカーをやっていたような腿(もも)の太い人にはワイド目なパンツを履かせないとデブに見える。
脚が太い人が総じて短パンが似合わないのは、腿(もも)と生地までの距離が短く空間が詰まって見えるからだ。この原理をわかっている女性モデルは、細い脚を更に細く見せる為に、腿(もも)ぐりがブカブカのショートパンツを履き、視覚効果を利用して脚を細く見せる。
この原理原則を分かっていると、フィッティングの時の目線が変わる。普段見れないモデルさんの生足をマジマジと見るようになる。
腿(もも)の太さを目で見て確認し、今まさに着せようとしているパンツを手放し、予備のパンツに切り替える事はよくある事である。
フィッティングでは、【どれだけタレントさんを恥ずかしめずに、最適なサイズ感の服を着せるか】が我々の技量なので、生の身体チェックを見逃してはならない。
例えば、男性で胸毛が生えている人に対してVネックは着せれないし、撫で肩の人には出来るだけ肩のしっかりした服を着せないといけない。
女性でウエストが太い人には、くびれを作れる服を着せないといけない。具体的にはブラウスをタックインして、ブラウジングしたり、ウエスト部分だけゴムのついた服を選んだりする。

スタイリストの世界はフィッティングが全て、服が決まってしまえば、タレントとカメラマンさえいれば、コーディネートが崩れることはほぼない。
つまり、仕事の90%が決まるフィッティングは神経を過敏に集中させないといけない。
タレントが
・どんな色味、シルエットの私服を着てきたか。
・それは柄だったのか、シンプルで大人っぽかったのか。ボロボロのグランジテイストだったのか。
・履いてきた靴のサイズは何cmだったか。
それをフィッティングが始まる直前の数分で分析し、インプットする。そして、タレントの好きなテイストを若干頭に入れた上で、これから着せる服と調合していく。フィッティングが始まると、
・服に対して、タレントが発する言葉の節々に気をつける。
・場合によっては、着せる予定の服を変えて、予備を提案する。
・少しでも首を傾げた様子を見せると別案を手繰り寄せる。
このあたりを真剣に取り組むのだ。
タレントが欲しいのは、「このスタイリスト分かっている感」である。それを導き出すために、目の動き、言葉、顔の曇り加減を見極める。
上記が分からない本気度の低いアシスタントは、その作業を根こそぎサボる。サボったフィッティングを何度重ねても時間の無駄である。身にならない。
愛情をかけて集めた服を、最後まで愛情深く送り出してこそ 良きスタイリストと言えるだろう。

フィッティングは5分で終わる。その5分の中に学びが5個見つけられたら、スーパーアシスタントになれる。ほぼ全てのアシスタントは1つ学びがあれば良いかどうかくらいだ。
タレントの私服の好みを分析し、これから着せる服を瞬間的に調整していこう。同じ人間でも半年後、1年後には服のテイストは変わっていくものだ。そこを見極めて寄せてあげよう。

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