他人との居心地の良い距離感が、信頼関係を築く。聞いて欲しい時に耳を傾け、見て見ぬふりをして欲しい時はそっとしておく。手伝ってあげた方が良い時は、無言で手を貸す。
このような居心地を作れているだろうか。
距離感で最も大事な要素は表情。如何なる時も朗らかであること、これは基本中の基本で 津野は数年前から現場では口角を常に少し上げるように努力している。気持ち悪くない程度に癖がつけば最高である。

次に相手との空気感。ここに関してスタイリストがやりがちな間違いは、着替えの際にタレントさんの真正面に立って【服の着せ待ち】をする事だ。これはキツイ。。。
例えば、貴方が半裸の状態で こっちを向いた他人が、着せたい服を持って待っていたらどう思うだろうか。。。スーパー気まずいはずである。
津野は真正面は出来るだけ避けている。そして、タレントが服を着るギリギリのタイミングでしか服を渡さない。少し待ちそうならラックにかかった服の整理をしている。つまり、敢えてよそ見をしている。これは大事な気遣いである。
「貴方のために待っているわけではないですよ。ついでですよ。だから、落ち着いてゆっくり着替えて下さい。」という無言の気遣いである。

空気感の具体例を更に1つあげよう。津野家には9歳の娘と7歳の息子がいる。例えば、彼らが、恥ずかしい転び方をしたり、予期せず失敗をする時がある。 津野はその光景を100%見たのに、見えていないフリをしてあげる。
具体的には、携帯をみて仕事をしていた振りをしてあげる。これが気遣いである。
1番最悪なのは「大丈夫?」と言って駆け寄る事だ。距離感が近くてキツい。
コケた人に対して「大丈夫?」と、そこそこの声のボリュームで駆け寄る時は、大抵、どう考えても大丈夫な時だ。マジでやばいコケ方をした時は、大声で「大丈夫か?」と凄いケンマクで人が寄ってくる。
コケた人や、ちょっとした失敗をした人にかける「大丈夫ですか?」のほとんどは、心配よりも相手に対する辱(はずかし)めの方が優っている。つまり、心配してあげる事で相手を追い込むのである。
現にウチの子供達は、見て見ぬフリをした時の方が、何倍も立ち直りが早い。距離感がバグっているアホな他人が「大丈夫?」と寄ってくると 恥ずかしくて死にそうな顔をしている。それはそれで可哀想である。
何でもかんでも「大丈夫?」と駆け寄るのが良いわけではない。声をかけるよりも無言で手を差し伸べて起こしてあげた方が良い事もある。
ちなみに、津野は机の角で脚をぶつけた人が居たとして、「大丈夫ですか?」とは絶対言わない。「うわっ、、痛そうっすねー、、、。」と寄り添う。すると相手は、「メッチャ痛い!!」というか、「大した事ない!」とやせ我慢するか、想いのタケを自由に発言出来る。そっちの方が返しは楽だと思う。
万が一間違えて「大丈夫ですか?」なんて言ってしまったら、どうせ「大丈夫、大丈夫」と言いながら『気にしないで下さい』と逆に気遣われるだけである。
これは望ましい関係性ではない。

この様なケースがスタイリストにも沢山ある。津野は撮影後、「タレントの私服を着せてあげる必要はない」と思っている。自分だったらお借りした衣装を返したら放っておいて欲しいからだ。
貴方もそうでは無いだろうか。「自分の服くらい自分で着るから、置いといて」が1番楽で気持ちいいのではないだろうか。
他にも、他人との気遣いとして大事な事は、
・もう続かなそうな会話を切断してあげる事。
・スタイリストの荷物を持ってくれるスタッフがいたら任せる事。
・数人しかいないエレベーターなら、開くボタンは押さない事。
・裾上げ作業とご飯は必ずテーブルを使う事
・弁当どうぞと言われたら、必ず直ぐに一口食べる事
この辺りである。気を使わない使わせない関係が最高なのだ。
スタイリスト業務は、『自分が必ずやらなければならない事』と、『他人がやりたそうな事』を見極めて、場合によっては「やらせてあげる事」も大事である。
貴方が「私の仕事なので、、、私がやらないとっ!」と他人のご厚意に背く行動を取ることで、相手にストレスが溜まる事もあるという事も知っておこう!!

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