映画宣伝活動の全貌

プロフィール

映画「変な家」の初日舞台挨拶だった。

映画の宣伝活動は3ヶ月前から始まる。

3/15公開なので。12/15頃には紙媒体の取材が始まる.なぜ紙かというと、発行までに時間がかかるからというのが大きいだろう。

主演の方の取材で1日10媒体、多い時は20媒体取材する。 

作品により媒体数は異なるが、人気俳優が揃ったりするとそれを一同に撮影出来る絶好のチャンスだ。雑誌社もこぞって集まってくる。

日々ドラマだ、映画だ広告だ、スケジュールを取られてる人気者が主演の事が多いので、

1日にこれでもかってほど詰め込まれるのがザラだ。

これを仕切る映画宣伝部も大変である。

取材日に1つの媒体が遅刻すると、その後 全ての撮影が押してしまうので.絶対押さないように進行する。

時間のプラカードをもったり

「撮影は残り1分です。」なんてお声がけしている。

超時間厳守だ!!

我々スタイリストも その時間感覚に協力しないといけない。服が乱れても「今のタイミングはそのまま入らず 流れで撮って貰おう」とか残り時間をみて判断したりしている。

さて、ここで1つ昔話をしよう。津野が

アシスタント2年目 唐沢寿明さん主演の映画「20世紀少年」の公開があった。(2008年)

この時の取材日の話だ。

六本木のスタジオ1棟全部押さえて、各部屋に取材陣を配置 1日の取材本数25本というとんでもないスケジュールが組まれた。

何故各部屋に取材陣を配備するかというと、カメラスタンバイの時間を削る為だ。唐沢さんが動けば

すぐに次が撮れると言う万全の状態となっている。

 

メイクさんは しっかり5分前に上げてくれた。

「さぁ行こうか」となり、オススメのJKを羽織って頂いたら、デカい、、、、。

2サイズ程でかかった、、、。完全に準備を見誤った。

一同止まり、「これどうすんの?」と怪しい雰囲気になった時には、宣伝部に呼ばれた。。。

「終わった。。。」師匠はいない。

いくらアシスタントとはいえ、このサイズ感のまま進めた日には後で師匠にやられる、、、。

が、もう時間はなかった。THE ENDだ。。

蒼白の表情の中1本目の撮影が始まった。

バストアップの撮影だった。。。袖はラピュタのロボットのように長い、、、

その時唐沢さんが口火をきった

唐沢さん「カメラマンさんさぁ、今日俺撮りたい角度があるんだよー。それやっていい?」

満面の笑みで、いつものお調子者感を出した。

全員思った「え?この人何言いだすの?」

カメラの時間は10分しか取られてない、

渾身のバストアップを撮るためにカメラマンさんは、1時間前からライティングを組んでいたのにも関わらず、思いつき発言だ。

しかし、そこは主演俳優.彼の意見は尊重しようとなり、唐沢さんの意見は通った。

唐沢さん「そこの窓枠でさぁ.肘付いて頬杖つくから、その角度で行こうよ。」

カメラマン「分かりました。それでいきましょう!」

となり、

袖を捲って肘を付いてシャツを袖口から1㎝だして完璧なサイズ感で撮影を終えた。

「よし!今日の取材25本中の1本だけはうまくいった、ラッキー」そう心の中で思った。

1本目は問題なく終わり、2本目に向かう。

隣のスタジオへの行きしな

唐沢さんは、津野の肩をポンポンと2回叩いて次へ行った。

「なんだろ?今の、、。」そう思っていた。

2本目は全身の立ち落とし写真でライティングが組まれてた。

「終わった、、、これは誤魔化しようがない」

そう思っていたら、

唐沢さん「カメラマンさんさぁ、JK脱いで肩掛けして良い?」

全員思った「また、変な事いってるよ、、、」

ただ唐沢さんは天才だ。相手が嫌な気分にならないような、言い方や表情をされる。

カメラマンさんも、笑顔で

「良いですねーそうしましょうか!!」なんて言いながら撮り出した。

もうお気付きだろう、このような方法で残り全ての取材を乗り切ったのだ。

津野の肩を2回叩いたのは、

「津野くん大丈夫だよ。今日は俺が上手くやるから」の合図だった。

わがままのように聞こえる、絶妙な愛情のおかげで俺は救われた。

泣ける、、、。全身に鳥肌が立つほどカッコ良かった。

この御礼は、何かでお返ししたいと思っていたのだが、アシスタントの立場では何も返せるものがなく、悔しい想いをしていた。

何も返せるものがなければ、こうして語り手となって「少しでも唐沢さんのファンを増やそう!」と考え

恩返しのつもりで この日以来100人以上の人に伝えてきた。

御本人は覚えていないだろうが、どこかで会えた際には深く御礼を伝えようと思う。

さて、現代に話を戻そう。

前述したように、

映画は、紙媒体から宣伝活動が入り、次はTV媒体が、ダーーーっと入る。知名度のある俳優さんだから、超大型番組の目白押しだ。

TV収録は毎回「祭」のような感覚にさせてくれるから大好きだ。

TVは大体オンエアが1ヶ月後なので、それを見越して公開日に向けたTV番宣が始まる。

最後にWEB媒体、新聞媒体が入ってきて いよいよ初日舞台挨拶を迎える。

初日を迎える前に、完成披露だの、イベントだのは入るが、基本的な流れはこうだ。

初日になると、宣伝部、俳優陣、我々スタッフは興行収入がどれだけ行くかソワソワしている。なんと初日の動員数で ほぼほぼこの映画の全体の収入が予想できるのだ。これは驚きだろう。

そして、大ヒットしたら、大ヒット御礼舞台挨拶などがこの後あり、少しでもお客様に見て頂こうと 俳優陣が全国の映画館に出向いて舞台挨拶する。

俳優さんによっては、九州〜北海道まで巡業する人もいるから驚きだ。

なぜ驚くかというと、ここに俳優さんのギャラは乗っていないからだ。

俳優さんのギャラというのは、「映画の出演料」でまとめられる。

そこには宣伝活動は含まれていない。

つまり何館回って挨拶しようがお金は貰えないのだ。

そこには、「自身の映画への愛情」それしかない。だから宣伝活動に励む俳優さん達を見ると感動する。

協力しようと思う。

今日で大方の宣伝活動は終わりを迎える。

3ヶ月も一緒に宣伝していると映画宣伝部や共演者の俳優さんと仲良くなることも多々ある。

そして、また違う作品で繋がったりすると、気持ちも高ぶる。これが最高に楽しい。

スタイリストとして、少しでもこの作品に関われた事が人生の宝物だ。 

間宮祥太朗、佐藤二朗 ダブル主演

「変な家」是非劇場でご覧下さい!!

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