衣装直しの上手い人.下手な人

プロフィール

撮影はカメラマン主導で動く、カメラマンの後ろに回る撮影staffは カメラマンの背中を付いて行くようにゾロゾロと移動する。

当然それに伴いモデルも動くわけだが、動く事で、髪と服は乱れ、その度に我々が割って入る。

「入ります」と一言声をかけ、出来るだけ短時間で入って戻る事を意識しなければならない。

「直し」は経験が全てだと言ってしまえば、それまでになってしまうが、

予め理解しておく事で動きは変わるので説明する。

基本的な乱れに関しては、素人でも分かる.コートの襟が逆側に向いてたり、JKのインナーが寄れてたりだ。

まずは入る勇気が1番、ウチは新人のうちからガンガン入らせるのでそこは「勇気」とか言ってる場合ではない。

当然見た時に どこを直すか定めて動くわけだが、モデルの近くまで行ってから、両面テープを剥がし出したり、スタイリストバックを開封しハサミを出したりし出す人もいる。

OUTだ。

タレントさんは1秒でも早く帰す、撮影はstylistのせいで1秒でも遅らせない、それをスタートで叩き込んでいないといけない。

●ガムテープは剥がして丸めておく

●両面テープは両面剥がして手につけてから入る

●糸は針に通して玉を止めてから入る

●安全ピンは外し、自分の服にでも刺して入る

これがマナー。

入ってからやたら長居するのもOUT。

「思い通りに行かない乱れを、長時間かけて直した直後にモデルさんが動いて意味なし!」って事も沢山ある。パッと入ってパッと出るが基本。

メイクさんも同時にINするのであれば、メイクさんが終わってから直さないと意味がない。同時に直そうとするとメイクさんにとっては邪魔で迷惑がかかる。

撮影の空気感も大事で、

まず始まった頃は「少しの直し」でも入らないと、マネージャーから「入ってくれ」と言われたりする。

「ちゃんと入ってくれるstylistだ」と認識させないといけない。マネージャーも探り探りなのだ。

ある程度、撮影して行くと 主導権はカメラマンに渡し 出来るだけ長く撮らせないといけない。いつまでも神経質に入っていると「そのくらいで入るな」的な空気になる。

昔、アシスタントがちょこちょこ入ったら、巨匠カメラマンに怒鳴られた事もあった。

「変わんねーよ、ちょくちょく入るな、撮らせろ!」と。

こちらも仕事なので、完璧な状態を望みたいが、それよりも空気を読む力の方が何倍も大事なのだ。

また、カメラマンが集中して数分経ち、直したくて満を持して入ったら、その角度にカメラマンは飽きて

違う角度を撮り始めるキッカケを作ってしまうこともある。

すると「入る意味がない」。これも空気を読めないstylistのジャンルに入る。要注意である。

「そろそろこの角度飽きるだろうな。直したいけど、今は入らず流しておこう」という判断も必要という事だ。

1番良くないのは、乱れてもいないのに、「スタイリストやってます」というタレントさんや、事務所さん向けのプロモーションとして入る事や、

カメラマンが まだ撮影位置を探っている時

モデルさんが静止していない時

に無意味に入ることである。 

「逆に直しが上手い人」はどういう動きをするか。

これは「先を読んでいる人」だ。

「次座りカットいきます」と言われた瞬間にモデルの側まで行って、撮り始める前にパンツの裾をもって、丈が上がらないようにしたり、

女の子でスカートだったら、インナーのパンツが見えないように、手持ちの布でカバーしてあげたりする。

スーツを着ている時に「パンツのポケットに手を突っ込んでみよう」とカメラマンが合図を送ると、上着の裾が全部後ろにいかないように、直す事も重要だ。

これに関して解説すると、

洋服は重ねれば重ねるだけオシャレに見えるもの。つまりJKの下にシャツや、Tシャツを着てる時に、カメラ位置次第では、被写体の面積の大部分がインナーな事もある。それだと「上がりがダサい」ので、JK8割インナー2割で写真に残す様工夫しなければならないという事だ。

いかにカッコよく、いかに細く見えるよう

素早く直す!これが出来る人と出来ない人の違いである。

stylist独立したての頃、メイクの大御所である佐々木ヨシエさんと一緒になった時、カメラマンが

「髪直して!」とヨシエさんに言った、

彼女は直しに入らず、

「この動きでこの角度で撮るなら、直しは不可能だ。入ったところで意味がない。」とカメラマンの意見を一蹴し、直さなかった時がある。

「カメラマンに言われたら、プロの意地でなんとかするのが仕事だ」と思っていた津野にとっては、衝撃的で、この発言にしびれた。カッコ良すぎた。

言われてみればその通りだった。でも、これは先が読めている人の自信の表れだと思う。沢山の直しを経験をされてきたヨシエさんだからこそ言える、ご意見だった。

この領域にいけるまで、我々も数々の経験を積んでいかないといけない。 

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