制作会社の方から新規のスタイリングのご依頼を頂いた。カレンダー撮影に参加していない俳優さんのカレンダーイベントの依頼だ。
「ん?」と思った。基本的に、撮影に同行したスタイリストがイベントまで担当する。そこで、依頼してきた会社に「ロケ撮影のスタイリストがイベントまでやらないんですか?」と尋ねた。すると、
「ロケを担当したスタイリストさんは、我が強くて意見を曲げない方で、、、撮影中 上手くいかなかったんで、俳優のマネージャーさんと話して、イベントは別の方に!という流れになりまして、、、」と言われた。
つい最近、大手プロダクションのマネージャーにも似た様な事を言われた。内容はこうだ「ヘアメイク、スタイリストを頼む時は、仕事として依頼している。なので、滞りなくやってくれればそれで良い。技術的なこだわりとかは正直いらない。」
コレに関しては納得である。マネージャーさんはヘアメイク、スタイリストの発注以外にも沢山の業務を抱えている。
所属タレントが どの仕事を受ければ目標に近づくか、常にそこを視点を置いている。更に自分の担当以外にも、会社のタレント全体も売らないといけない。CM、テレビ、雑誌、SNS、イベント、、、無数にスタイリストが必要で、その1つ1つに時間なんてかけていられない。
滞りなく仕事をしてくれて、タレントも満足すればそれで◎。にも関わらず、その中のたかが1媒体で 思う様にスタイリストが機能せず、ストレスを抱えるくらいなら「外してしまえ!!」と思うのだ。
マネージャーとタレントの目線は その1媒体ではなく、遥かに先の目標に向いている。例えばアカデミー賞だったり、トニー賞だったり、ドラマの主役だったりだ。。。
しかし、それが理解できないスタイリストは、【俺】を誇示する。俺のスタイリング、俺のやり方、俺の俺の俺の、、、。目線は自分である。そんな人間を誰が使うだろうか。。。

目線は常に相手を向いていないとNGだ。俺がどうしたいかではない、相手をどうするべきかに焦点を当てれないスタイリストは仕事がシュリンクして、先細るだろう。。。
例えば、津野はテレビ局で偶然あったマネージャーから仕事の依頼を受ける事がある。ファッション誌をやっていた時は、編集部で作業をしていると違う編集さんから声をかけられて、仕事が雪だるま式に増える事があった。
これは何を意味するか、、、分かるだろうか。答えは、「人は短絡的に目の前にいる人で、仕事を終わらせようとする」ということだ。
マネージャーにしろ、編集者にしろ膨大な量の仕事がたまっている。その「タスクの一部でも目の前にいる人が処理してくれるなら、それで良いと思っている」と言う事。これは企業が会食で仕事を決めるのと同じ原理。会食中に気分が良くなって、「そうだ1案件振れる仕事があったと思い出して振る。」というわけ。
だから、スタイリストの仕事は現場で増える。案件が多い人が更に案件が増える。ある程度の信用さえ相手に届いていれば、負ける事はない。

つい数ヶ月前、学校で講義をした際に、生徒から
「自分のスタイルを貫けないのは辛い。マネージャーの操り人形になりたくない。。。」という意見があった。
熱い気持ちは分かる。操り人形が納得いかなければ、気が済むまで思い通りにやってみれば良い。恐らく面倒くさい人の烙印を押されて、仕事は回ってこなくなるだろう。操り人形でもいいから、相手を気持ちよくさせる。そうやって経験していくうちに、いつの日か仕事の意味がわかる日がくる。
メイク、スタイリストは尖っていれば良いわけではなく。協調性や人間味も同等に必要という事である。先日、津野はアーティストのMVスタイリングのコンペで あるスタイリストに負けた。
津野と、超有名アーティストを数々スタイリングするスタイリストと最終2人まで残ったが、レーベルの会議で相手に軍配が上がった。
その数ヶ月後、何故か同じアーティストで依頼がきた。。。「コンペで勝ったスタイリストではないのか?」と思い、津野に仕事が回ってきた理由を聞いたら、「一度お願いはしてみたが、服も合わなければ人も合わなかった」と言われた。
この事からも分かるように、仕事は人と人とのやり取りである為、相手に合わせる力は絶対に必要なのだ。許される範囲内で、自分のスタイリング力を見せつける事は必要な事。しかし、自分を押し出し過ぎて、お客様を置いていくのは違う。常に0.5歩先を行くスタイリングを心がけ、1歩先まで行かない様に調整していこう。

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